「マジック」に気づき、自由になる〜土橋先生からのメッセージ

この国とかお金のシステムなどいろんな社会のシステムを含めて、
「すべてマジック」なんじゃないかと、そんなふうに私は思っています。

マジックというふうに考えると分かりやすいことがいっぱいあるんですね。
ところがマジックだと分からない人がほとんどで、
その人たちがマジックをかけてる人の言うとおりに動いている、そんな感じがしますね。

医療においてもそれははっきりしていて、検診もそうですし、診断・治療というのも、
枠組みを決めて、やり方を決めて平均化して、その患者さんに特別なことをするのではなく、みんな一律に同じことをする、……これをマジックというふうに考えると非常によく分かるんですよね。

マジックという以上、そこにはタネがあるわけです。
タネ明かしをしてしまうと「なんだそういうものだったのか」と分かっちゃうんですけども、
そうした「タネ明かし」について知っている人はほとんどいない。
医者もマジックのなかで仕事をしていますから、もちろん医者も分からないわけです。

少し視点を変えてみると、全部タネが分かっちゃうと「なんだこんなことか」となりますから、
いま受けている治療についても「こんなことで治るわけがない」ということがわかってしまう。
で、ちょっと逆説的な言い方になりますが、このマジックから解放された人が治っていっていると私は思っているんです。

たとえば、不思議な経過でガンが治っていく人がたくさんいます。
そのなかには自分でガンだと“診断”して、自分で“治療”して「治った」と言っている人もいるようですけども、
そうじゃなくて、本当に医学的にガンだと診断されて、それがもうダメだと言われている人が、
医学的には理解できないような形で治癒してしまう、
自然退縮とかも含めて、そうしたことも現実に起こっているわけです。

こういう方は、おそらく医療がマジックだという意識はないかもしれませんが、
自然にタネ明かしみたいなことを自分でしちゃって、「もういいや」と開き直っている。
そうやってマジックという作られた枠組みを取っ払っちゃった人のなかに、
まったく違うエネルギーが入ってきて、それで治っていくというふうに、私は感じるのです。

タネ明かしに気づいていくための手段というのはいろいろあるわけですが、
私はそうした手段は何でもよく、ただ「枠の外へ出る」という意識が大事だと思っています。

この社会の政治、宗教、マネー、こうしたものすべてがマジックであると気づいた人が、自由になるわけです。
自由になるというのは、いままで閉じていた窓を開いて、新しい空気が入ってきてまったく違う空間になっていく、
そんな状態をイメージすればいいかもしれません。

その空間が身体であれば、まったく違う身体になっていくわけで、
マジックだと分からなかった時にかかっていた病気も、
「あぁ、そうなんだ」というふうに分かれば、どういう形にせよ消えてしまうことになる。
ちょっと不思議に思われるかもしれませんが、そうしたことも起こりうるのです。

そもそも、医学もマジック、その大元にある科学もマジックですから、
まず決め事があって、その範囲だけで「やっていきましょう」ということになっていますから、
そんな枠があってはすべては説明できないですよね。
身体に起きた変化を説明しようとしたって無理だし、
それを治そうとしたってちょっと不自然だし、無理があります。

そういったものから解放されていけば、科学では説明できない、医学では説明できない、
この世の中の仕組みで言えば法律では説明できないような、
“結果としてそういうことが起きる”という現実がしっかり捉えられるようになっていきます。

ですから、世の中がすべてマジックだというふうに分かるか分からないかで、人生は大きく違ってきます。
マジックだと分かって、そのマジックの世界をどう生きていくかという、これも私は楽しいんじゃないかと思います。
私自身はそういう感覚で、承知の上で、この世界を生きていくという、そこに自分自身は生きる意味を見出しているのです。

皆さんも病気になって、診断されて、治療という世界に入っていくわけですが、
「これはひょっとしたらマジックじゃないか?」と、
「このタネ明かしができたら完全に治っちゃうんじゃないか」と、
「この先生の言うことだけ聞いていたらマジックの世界で終わってしまう。そういうわけにはいかない!」と、
少しでも考えることができたら、経過も変わっていくと思います。

病気が治ることも大事ですが、そうなると、それ以上に大事なことがつかめるのではないかと思います。
皆さんには、そういうふうに考え、生きていける人になってもらいたいと思っているのです。

土橋重隆の「平成養生訓〜21世紀は治療から予防へ」2014年9月3日「すべてマジック」をもとに構成)